中小企業退職金共済( 中退共 )の活用
「 中退共 」とは
中退共 とは、昭和34年に中小企業退職金共済法に基づき設けられた中小企業のための国の退職金制度です。独立行政法人勤労者退職金共済機構・中小企業退職金共済事業本部が運営しています。
事業主が中退共と退職金共済契約を結び、毎月の掛金を金融機関に納付します。(全額事業主負担)
従業員が退職したときは、その従業員に中退共から退職金が直接支払われます。
中退共 の税務
法人・個人事業主の税務
掛金支払時
法人の場合: ※全額損金(法人税法施行令135条1号)
個人事業主の場合: 全額必要経費(所得税法施行令64条2項)
※資本金または出資金が1億円を超える法人の法人事業税については、外形標準課税が適用されます。
従業員の税務
掛金支払時
給与課税等はされません。
退職金一時金として受け取ったとき
退職所得として課税されます。
退職所得は、老後の生活資金や給与の後払い的な性格があることから、給与や他の所得に比べ、税務上有利になっています。
まず、所得は、2分の1課税となっています。
退職所得の計算
(源泉徴収前の収入金額 - 退職所得控除) × 1 / 2 = 退職所得の金額
退職所得控除
勤続年数20年以下: 40万円 × 勤続年数(1年未満切上げ)
(最低額80万円)
勤続年数20年超: 800万円 + 70万円 × (勤続年数 – 20年)
退職所得控除の範囲内であれば、退職所得はゼロになりますから、例えば、勤続年数20年であれば、800万円まで非課税、勤続年数40年であれば、2200万円まで非課税ということになります。
退職年金として受け取ったとき
退職年金として受け取ったものは、雑所得(公的年金等)として課税されます。
中退共 のメリット・デメリット
中退共のメリット
- 会社(または個人事業主)は掛金を全額経費にできる
- 人材確保・従業員のモチベーションアップにつながる
- 新たに加入すると、国が1年間掛金の一部を助成してくれる
中退共のデメリット
- 加入1年未満の退職者への退職金は支給されない。
- 掛金の減額が難しい
- 掛金の分だけ人件費負担が増え、キャッシュアウトが増える
中退共 のメリット
会社(または個人事業主)は掛金を全額経費にできる
会社(または個人事業主)は、掛金が全額損金になります。退職金のための積み立てをするような形で節税効果があります。
人材確保・従業員のモチベーションアップにつながる
従業員に退職金制度を周知することで、老後への安心感もあり、会社に長く勤続するメリットもありますので、仕事へのモチベーションアップにつながります。
新規の人材確保の際にも有利になります。
新たに加入すると、国が1年間掛金の一部を助成してくれる
新しく中退共制度に加入する事業主には、国から掛金月額の2分の1(従業員ごと上限5,000円)が加入後4か月目から1年間助成されます。
(パートタイマーは金額に応じて。同居の親族のみを雇用する事業主等は対象外など、詳細については中退共ホームページやパンフレットをご参照ください。)
公式サイトで退職金のシミュレーションができます → 退職金シミュレーション(中退共公式サイト)
例えば、月額1万円を40年間かけた場合、掛け金総額480万円(うち助成6万円)に対し、約591万円の退職金が受け取れることになります(2021年5月時点の試算)。
そのほか、「月額変更助成」といって、一定の場合に、掛金を増額したときの助成もあります。
中退共 のデメリット
加入1年未満の退職者への退職金は支給されない
中退共に加入して一年未満で退職した方には退職金は一切支給されません。
また、加入2年未満で退職の場合、退職金は掛金総額を下回り、損になります。
2年以上、3年6ヶ月まで場合は、退職金は掛金相当額になります。
人の入れ替わりの早い会社では損になります。入社から2~3年様子をみてから制度に加入する会社も多いです。
掛金の減額が難しい
掛金月額の減額は、被共済者が同意したとき、または現在の掛金月額を継続することが著しく困難であると厚生労働大臣が認めたときのほかはできません。
掛金の分だけ人件費負担が増え、キャッシュアウトが増える
掛金は月額で最低5,000円からです。5,000円から30,000円まで従業員ごとに任意に選択できます。1人当たり年間で最低でも60,000円の固定費増となります。
まとめ
会社に継続的に利益が見込まれる場合、中退共は節税意外にもメリットの大きい制度です。デメリットも踏まえて、長期的に継続できそうな金額設定にして有効に活用することをお勧めします。